説明
: 本作は、川岸から綱を引いて苫船を曳く姿を描いた曳舟図小柄。四分一磨地に繊細な毛彫を施し、二人の船曳人が舟を曳く様子を表す。曳綱は苫船の前方に立てた棒に結わえられ、苫屋根の下には鉢巻をした男が片肘を立てて寛ぐ姿が見える。 船曳人の綱を引く力強さと動き、衣服や蓑の細かな線、綱の張り具合、舟の構造、水面のわずかな波紋までを簡潔な毛彫によって巧みに描き出す。 装飾を抑えた四分一地の落ち着いた色調を生かし、最小限の彫で情景を表現した風情ある小柄。 作者の悦乗は、後藤程乗の次男として、寛永十九年(1642)京都で生まれ。理兵衛家の祖。加賀前田家から150石を支給され、演乗と隔年ごとに金沢に出張滞在し、彫金と財政面の仕事に従事し、多くの門人を養成、加州金工の発展に尽力した。四郎兵衛本家と共に徳川幕府の用達も行う。京都で宝永五年(1708)没。 平成28年(2016)保存刀装具審査合格。