寸法
: 縦: 7.3cm 横: 7.1cm 切羽台厚さ: 0.5cm
説明
: 百人一首の和歌「ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明(ありあけ)の 月ぞ残れる」(千載集 藤原実定)の歌を表した図であろう。[訳]時鳥が確か鳴いたと思ってその方角を眺めると、(その姿はもう見えず、空には)ただ明け方の月だけが残っているよ。[解説]平安時代の雅を愛する貴族たちにとって、夏のはじまりに飛来する時鳥は、季節の訪れを象徴する鳥として、鶯のようにとても詩的な魅力的なものに思えたようである。特に時鳥の第一声(初音)を聴くのは非常に典雅なこととされた。そこで山の鳥の中で朝一番に鳴くといわれる時鳥の声をなんとか聴くために、夜を明かして待つこともよく行われていた。しかも時鳥はとても動くのが速く、こちらと思えばまたあちら、というように移動する。「すわ、時鳥の初音だ」と振り返った瞬間、もう時鳥はそこにはいない、という印象が歌に込められている。本作は鉄磨地の縁を三日月に見立て茎櫃孔上に地透で時鳥の飛来を据える。目では追えない有明の時鳥の姿。興味をそそる鐔。