説明
: 本作は太刀 無銘 「千手院」極め、第52回(平成18年)指定重要刀剣。千手院派は奈良の若草山麓の千手谷付近に存在した僧院に抱えられた鍛冶集団という。伝書では平安末期の行信と重弘を祖とされるが有銘作はない。無銘の千手院極めは、姿や地刃が古調で大和物で最も古く、大和物に見えて制作年代が鎌倉期を下らぬと鑑せられる古雅な作。かつ大和物に見えて他の4派(當麻・手掻・保昌・尻懸)に当てはまらない作風をした鎌倉期の大和物をいう。本作は、「生茎で、細身・小切先で腰反りのついた優美な太刀姿を呈しており、鍛えは板目に流れ肌が交じり、地沸が厚く付いて、地景入り、刃文は直刃調に浅く湾れて、小互の目・小乱れ交じり、小沸が厚く付き、刃縁ほつれて、二重刃・打ち除け・湯走りを交え、帽子は盛んに掃き掛けるなど、大和気質が強く表れた古様な出来口を呈しており、大和千手院派の典型的な作柄といえる。同派極めの中でも特に優品であり、製作年代は鎌倉時代前期を降らないものと鑑せられる(重要図譜より)」。田野邊(探山)先生の鞘書きあり。